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有益さマイナス5億

江戸川乱歩『孤島の鬼』の諸戸は不幸になるよりなかった

江戸川乱歩『孤島の鬼』が最の高 of 最高って感じだった。
どんな風に最高だったかというと、読了後に「ホモが嫌いな女の子なんていません!」と叫んだ。もちろんBLが苦手な女の子はいる。とても冷静な状態じゃなかったのだ。
いや、細かいことは置いといてとにかく最高だった。



というわけで、

▽Attention!
・今回は読書感想文というよりも腐女子としての私の絶叫ログで、
 ここは公式様とは一切関係はない非公式ブログです!
・全年齢対象ですが、畸形・白痴・片輪など今日の人権擁護の知見に照らして
 不当・不適切と思われる語句や表現があるので苦手な人はブラウザバックぷりーず!



自分で書いといて懐かしさで死にそう。

 

 

ちなみにこれは腐女子の妄想乙案件ではない。
男色の資料を収集していた乱歩は、はっきりと男色をモチーフとして『孤島の鬼』を書き上げたのだ。(のちに「書き上げるにあたって邪魔だった」とは言っているものの)

http://ecx.images-amazon.com/images/I/51gbhIkUBqL._SY445_.jpg


ほんとだもん!男色だったもん!!


まずは簡単なあらすじから。
会社員の蓑浦はある日、恋人の木崎初代を何者かによって殺害されてしまう。復讐心を胸に独自に事件を捜査していたところ、至る所で諸戸道雄の影がチラつく。諸戸は以前から蓑浦に対して同性愛的恋心を抱いており、蓑浦はそれに気付きつつあくまで友人として付き合っていた。蓑浦は当初、恋人と自分の仲を妬んだ諸戸が初代殺しをやったのではないかと疑うものの、実のところ諸戸も個人的な因縁によって独自の調査をしていたのだと判明する。やがて二人は諸戸の父・丈五朗がすべての黒幕だと突き止め、彼の住まうとある離島に乗り込み真相へと迫ってゆく。


私がこんなにはしゃいでいるのは、なにも大好きな江戸川乱歩作品に男色的要素が出てきたからだけではない。
腐女子に、少なくとも私にとって大事なのは「関係性」だ。関係性がきちんと描かれているならば、セックスしてなかろうが手も繋いでなかろうが、果てには会話すらしてなかろうがどうでもいい。
ちなみに少年漫画や部外者からすれば「なんでこんなのにまで…」(ex.忍たま)って思う作品にまで腐女子が湧いて出てるのは、恋愛という要素をそぎ落として純粋に人間同士の絆=関係性に腐女子が食いつく生き物からだからだ。あとは自分の妄想次第。中国山水画から続く余白・余韻の美を腐女子は受け継いでいるのだ。


話が逸れた。

諸戸と蓑浦。二人の間には埋めがたい溝があった。
諸戸はバイではなくゲイ。男性しか愛せないばかりか女性に対する性的嫌悪感すら持っていた。蓑浦の少年を思わせる美しさに惹かれており、とても一途だ。
対する蓑浦は女性の恋人がいるヘテロ。諸戸のことは友人としては好いているが、それは外見が人並みはずれて美しく優秀な諸戸に選ばれているという事実が自尊心を満たすということと、体育会系ばかりの同僚に囲まれ話し相手に飢えていた(蓑浦はありていに言えば現代のサブカル趣味だった)ことが少なからず影響していた。演劇や小説などが好きなものの、家庭の事情で高卒で働き始めた蓑浦は自分の文化的素地を貧弱と恥じ、研究職に就くインテリで教養の高い諸戸との友人関係でそれを埋めようとする節があった。

「尊い…(合掌)」ってやつである。
相思相愛の関係もいいとは思うが、闇の腐女子a.k.a私としてはお互いの気持ちがすれ違いまくっていればいるほど性癖の聖痕-スティグマ-が疼くのだ。
諸戸は蓑浦を純粋に愛しているが、蓑浦は諸戸のステータスを踏まえて恋心を許容している。


ところで「諸戸のことを友人としては好いている」と書いたが、実際は少し違う。
諸戸からの好意をはっきり自覚したあとも蓑浦は彼と銭湯で背中の流し合いをしたり、散歩中に諸戸に手を握られても振りほどかずそのままにしたりしている。諸戸からすればモヤモヤしっぱなしな態度だ。諸戸の気持ちに応えるつもりは蓑浦にはサッパリないものの、相手からの贈り物などはきっちり受け取るし、連れ立って観劇することもある。

 

地獄だ。本カノ(本命彼女)持ちの麺(V系バンドマン)とガチ恋の蜜ギャ(ガチで恋しちゃってる貢いでるバンギャ)みたいな地獄の構図だ。

 


結果的にメンタルが追い詰められてヤケになった諸戸は酔った勢いで蓑浦を押し倒した挙句、「友達でいてさえくれればいいから…好きでいさせてくれるだけでいいから…(意訳)」と泣きながら漏らし、蓑浦もそれを消極的ながら受け入れ友人関係は続いていく。

終わらない地獄である。むしろ闇が深まっている。最高。どんどん片思いこじらせてこうな!って感じだ。ドンドンパフパフ!


ちなみに何度も言うが、全て公式で私の妄想ではない。


そしてそんな曖昧な関係のまま、物語の終盤で二人は地下の洞窟迷路で彷徨う羽目になってしまう。
出口のない暗闇で疲れて身を寄せ合っている内に諸戸は「君と二人でこの別世界へとじ籠めて下すった神様が有難い。(中略)悪魔の子としてこの上生き恥を曝そうより、君と抱き合って死んで行く方が、どれ程嬉しいか。蓑浦君、地上の世界の習慣を忘れ、地上の羞恥を棄てて、今こそ、僕の願いを容れて、僕の愛を受けて」と蓑浦に迫る。
これに対する蓑浦の反応は「ゾッと総毛立つ様な、何とも云えぬ嫌悪を感じた」である。
ちなみにこの直前まで蓑浦は「怖い、怖い」と言いながら諸戸に擦り寄ったりしていた。相手の恋心を知りながらも、である。
相手の気持ちを知りつつボディタッチしておいて、相手がモーション起こせば「そういうつもりじゃなかった」と拒否。だんだん蓑浦がサークルクラッシャーに思えてきた。


ともあれ最終的に二人は洞窟から生還し、事件も解決を迎える。が、それでも諸戸に幸せが訪れることはない。
蓑浦は事件を追う中で出会った、殺された恋人・初代の生き別れの妹と結婚してしまうのだ。個人的な因縁(父親が黒幕)があるにせよ全面的に蓑浦の調査に協力し、父親を殺す覚悟までしてこの結果。
とは言えここで蓑浦が妙な同情心を出して諸戸を受け入れたらそれはそれで地獄なので、どうしようもない。

そして事件の事後処理が進む中、諸戸は病床に臥し、帰らぬ人となってしまう。
彼の最期を看取ったものによれば諸戸は、最後まで蓑浦からの手紙を抱きしめ蓑浦の名前を呼びながら息を引き取ったという。


最高である。闇の腐女子は登場人物が死んでしまう話が大好きなのだ。
どうしようもない。諸戸は救われることなく死んでしまった。だけれど、生きていたとしても救われることはなかっただろう。蓑浦が同情ではない気持ちで諸戸を受け入れることはあり得ないだろうし(そもそも蓑浦は同情でさえ諸戸を受け入れることを嫌悪した)、バッドエンドに繋がるルート分岐の選択肢だけがあるのだ。

「道雄は最後の息を引き取る間際まで、父の名も母の名も呼ばず、ただあなた様の御手紙を抱きしめ、あなた様のお名前のみ呼び続け申候」

この物語を締める一文が、私は何よりも好きだ。



さいごに
私の表現力の不足で随分な俗っぽく、やたらと男色趣味に偏った説明になってしまったが、『孤島の鬼』はとても面白いミステリー小説だ。スリルと外連味に満ち、ときには読者の意を突く展開もある。
蓑浦と諸戸の関係も耽美的な麗文で綴られているので、いわゆる「BL」に抵抗感がある人もこれで忌避せずに読んでくれると嬉しい。